特集
健康にも美容にも嬉しい!中国に学ぶ温かくて消化に良い朝ごはん
- 監修
- 赤枝 いつみ
- テキスト
- 五十嵐ゆかり(監修・画像提供:木村顕(WORLD BREAKFAST ALLDAY))
2017年06月05日[2018年04月11日更新]
初めまして。管理栄養士・料理研究家の五十嵐ゆかりです。この連載では、世界各国の朝ごはんを提供している東京・外苑前のレストラン「WORLD BREAKFAST ALLDAY」とコラボレーションし、毎回1つの国をピックアップして、その国の朝ごはんや食文化、ライフスタイルなどについて、管理栄養士の目線からご紹介していきます。 日本とは異なる魅力を持つ世界の朝ごはんには、毎日の朝ごはんをさらに楽しくしたり、日々の健康や美容を支えるためのヒントが隠されています。世界の朝ごはんをご紹介することを通して、みなさんの生活がよりヘルシーに、より楽しくなるきっかけとなりましたら嬉しく思います! さっそくですが、今回は中国の朝ごはんをご紹介します。
ポイントは「色」。古くから健康な食生活を意識してきた中国に学ぼう朝ごはんについてご紹介する前に、まずは中国の食文化についてご紹介します。 中国には、「医食同源」という思想があります。これは、病気を治療するのも(医)、日常の食事をとるのも(食)、ともに生命を養い健康を保つために欠かせないもので、源は同じ(同源)という考え方。このため、食材はすべて健康に関わる性質を何かしら持っていると考えられているそうです。 このように、人間にとって食がいかに大切かという意識が古来よりひと際強かった中国では、おいしくて健康的な料理を作ろうとする知恵と情熱が人一倍。そんな中国の料理で欠かせないポイントが「色」なんです。 中国の伝統医学では、さまざまな食材を5色に分別し、赤色は心臓、青(緑色)は肝臓、黄色は脾臓、白色は肺・胃腸、黒色は腎臓にそれぞれ効くとされているそう。 日本でも、「いろいろな色の野菜をバランスよくとりましょう」とよく言われますよね。これは、黄色の野菜にはビタミンCが多く含まれていて、緑色の野菜には鉄分とカルシウムが多く含まれているなど、栄養素と色には深い関係があるからなんですよ。 なぜ「北京料理」は塩辛い? 地方によって味つけが異なる秘密中国は人口約13億人、面積も約960万平方kmと、日本と比べてもかなり大きな国なので、地域によって気候や風土も大きく異なります。そのため、地方によって使う食材や味つけが異なり、中国では「八大菜系」といって8つに分類されますが、日本では「北京料理」「四川料理」「広東料理」「上海料理」の4つに分類されることが多いです。 それぞれの料理の特徴は以下の通りです。日本も地域によって食材や味つけが異なりますが、中国でもそのような違いが見られるようですね。 ・北方系の「北京料理」:味が濃く、塩辛い 日本も東北地方では味が濃くて塩辛い味つけが多いですよね。寒い地域で塩分摂取量が高い理由として、塩分を摂取することで体温を維持したり、雪に備え収穫した食料を保存するのに塩漬けにすることが挙げられそうです。中国も日本も、寒い地域に共通した食事の特徴が見られるんですね。 「温かくて消化に良いもの」は、健康にも美容にも嬉しい効果が中国では、朝ごはんのとり方はとっても多様です。共働き家庭が大半のため、家族で朝ごはんの用意を手伝うことも多いそう。朝ごはんを売っているお店で簡単なものを買って、職場へ向かう途中に歩きながら食べる人もいるようですよ。 朝ごはんの特徴としては、「温かくて消化に良いもの」が食べられています。これは管理栄養士の視点から見てもとてもいい食習慣で、日本で朝ごはんを作るときにもぜひ意識して取り入れたいことです。なぜなら、温かいものを食べて体温を上昇させることで、頭が働き、からだが活発に活動できる状態になりますし、消化に良いものは胃腸に負担をかけにくいですよね。胃腸に負担がかかると、血行不良でからだがだるくなったり頭が働きにくくなるため、それを防いでくれます。 からだを温めることは、健康にも美容にも嬉しい効果が期待できるので、日常生活でもぜひ意識してみてくださいね。健康の面でいうと、冷えを防ぐことで免疫力の向上に貢献し、風邪予防につながります。美容の面でいうと、体温が上がることで血流が良くなり、肌のくすみやむくみ予防につながります。 汁物と乾き物を組み合わせ、栄養バランスを考慮した中国の朝ごはんさて、そんな中国ではどんな朝ごはんが食べられているのでしょうか? 「WORLD BREAKFAST ALLDAY」では、中国人の方に現地で食べられている朝ごはんをヒアリングして、こちらのメニュー(上写真)を提供していたそうです。 写真を見てみると、粥やワンタンなど汁気のあるものと、油条や饅頭など比較的乾いたものとを組み合わせて食べられているようですね。やや炭水化物が多めな印象ではありますが、豆漿(豆乳)に油条や饅頭を浸して食べたり、粥には具をトッピングするなど、栄養バランスが偏らない工夫をしているように感じられます。 実際に提供されていたメニューをそれぞれご紹介します。 油条(ヨウティアオ) 発酵させた小麦粉からつくる棒状の軽い揚げパンです。中国全土で食べられています。 饅頭(マントウ) 発酵させた小麦粉を蒸してつくる蒸しパンです。日本の肉まんのような餡は入っていません 包子(パオズ) 中に餡が入った饅頭です。餡にはさまざまな種類がありますが、朝は青菜やキノコが入った菜包(ツァイパオ)が人気です。 焼餅(シャオビン) 小ぶりのパンで表面にはゴマがふってあるものが多いです。食べるときは、なかに羊の肉などをハンバーガーのように挟んで食べることもあります。 粥 皮蛋と脂身の少ない豚肉の入った「皮蛋痩肉粥(ピーダンショウローズォウ)」が人気です。南部を中心とした全土で食べられています。 豆漿(豆乳) 温かく甘い豆乳です。油条や饅頭を浸して食べます。 豆腐脳 柔らかい豆腐を醤油などで味つけした湯豆腐のようなものです。北京などを中心に食べられています。 春雨・ワンタン あっさりしたスープに春雨やワンタンを入れて、ラー油や醤油で味つけをします。干し海老や海苔をトッピングしたりして食べられています。 茶葉蛋(チャーイエタン) 茹で卵をお茶と香辛料にじっくり漬け込んだ煮卵です。朝ごはんとして日常的に食べられるほか、おやつにもよく食べられています。 皮蛋(ピータン) アヒルの卵をアルカリ性の泥の中に1か月以上熟成させたものです。ややクセのある独特な味がします。 お粥や温かい豆乳を取り入れて、「温」を意識した朝ごはんに中国の「温かくて消化に良い朝ごはん」に習い、朝食に取り入れられるアイデアをいくつか考えてみました。 例えば、ふだんの朝ごはんで冷たい豆乳を飲んでいるとしたら、温かい豆乳にしてみましょう。「温」を意識した朝ごはんに変えるだけでも、いつもより活発に活動できるようになるかもしれません。 ごはん派の人なら、「粥」を取り入れてみては? ごはんを水やだしで煮てやわらかくしたら、たんぱく質を含む食材をトッピングしましょう。たんぱく質にはトリプトファンというアミノ酸が含まれており、体内時計を調整したり、ストレスを和らげたりしてくれます。中国のようにピータンをトッピングするのもおいしいですが、気軽に手に入れることはできないため、茹で卵でOK! これでたんぱく質を補えます。 さらに、青ネギや香菜など緑色野菜をプラスすれば、ビタミンやミネラル、食物繊維を補えますよ。朝が忙しく料理にあまり時間をかけられない人は、加熱に時間がかかる野菜よりも、非加熱でも食べられる野菜を刻んでトッピングしてみてください。 パン派の人なら、「油条」を真似して、カリカリにトーストしたパンを温めた豆乳に浸して食べてみるのもいいですね。その際、豆乳にははちみつを少し混ぜると、甘みが加わりパンとの相性がよくなります。パンとコーヒーで朝ごはんを軽く済ましてしまう人は、栄養バランスが偏ってしまいがち。コーヒーを豆乳に変えるだけでも、たんぱく質やミネラルが補えて栄養バランスがアップしますよ。 今回は、中国の朝ごはんをご紹介しました! 中国の朝ごはんから学ぶアイデアを取り入れて、ヘルシーでおいしい朝ごはんをぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。 |