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おいしさ・栄養・安心。3拍子揃った野菜飲料開発の苦労とは

おいしさ・栄養・安心。3拍子揃った野菜飲料開発の苦労とは

赤枝 いつみ

監修
赤枝 いつみ
公衆衛生分野での職務経験豊富な管理栄養士
  • 撮影
    江森康之
  • テキスト
    タナカヒロシ
  • 撮影
    江森康之

2017年07月06日[2018年04月11日更新]

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厚生労働省が推進するプロジェクト「健康日本21」では、1人あたり1日350g以上の野菜を食べることが推奨されています。しかし「国民健康・栄養調査」によると、ここ10年は平均して1日60g前後が不足。慢性的な野菜不足が叫ばれています。

そんななか、人々に親しまれ続けているのが野菜飲料です。売上は15年前と比べて約300億円増加、1,500億円を超える市場規模となっています。では、実際に野菜不足を野菜飲料で補うにはどうすればいいのでしょうか。管理栄養士の三城円さんと、伊藤園で野菜飲料「1日分の野菜」を担当する内山修二さんにお聞きしました。

内山修二(うちやま しゅうじ)

株式会社伊藤園 マーケティング三部部長。「1日分の野菜」を中心に数々の野菜・果汁飲料の商品企画に携わる。野菜ソムリエジュニアマイスター。

三城円(さんじょう まどか)

管理栄養士。自身の摂食障害などの経験から、食べる恐怖や罪悪感にひとりで苦しむ人を支える「パーソナル管理栄養士」として独立。「食べるダイエットで食の自立」をテーマに、ダイエット、摂食障害、アスリートなど、一人ひとりの目的に沿った食事コンサルティングを行う。2015年「管理栄養士キャリアデザイン塾」をスタート。食に悩んだら気軽に相談できる「パーソナル管理栄養士」の全国ネットワークづくりを行っている。

「食べる」と「とれる」はイコールじゃない。隠れ野菜不足に注意!

----三城さんは、管理栄養士として多くの方の食生活サポートをされていますが、野菜不足を感じることは多いですか?

三城:基本的にみなさん野菜不足ですね。特に緑黄色野菜が不足していると思います。

内山:日本人の野菜摂取量は、以前から大きく変わっているわけではないのですが、とる野菜の種類が変わってきているんです。昔はごぼうや大根などの煮物に使われるような根菜類が多かったのですが、食の西洋化に伴い、いわゆるサラダなどで使われるキャベツやレタスなどの葉菜類が増えてきています。

三城:野菜によって含まれている栄養素が違うので、いろんな種類をバランスよくとることが大切なのです。

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----野菜をバランスよくとるコツはありますか?

三城:外食中心の方は、サラダよりも、できる限り温野菜でとったほうがいいと思います。サラダに使われるレタスの多くは水分です。そのため残念ながら野菜の量としてはそんなに多くありません。一方、温野菜は加熱するため、熱に弱い栄養素は生よりも少なくなりますが、野菜の摂取量が増えますので、相対的にとれる栄養価は高くなります。

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パーソナル管理栄養士の三城円さん

----そんななか、野菜飲料の人気が年々高まっていますが、栄養価としてどれだけ野菜の代わりになるものなのでしょうか?

三城:野菜飲料と野菜は、栄養価の観点から見るとイコールではないんですよ。なぜなら、同じ量の野菜を使っていても、加工の段階で失われる栄養素があるからです。逆に野菜飲料には、野菜を食べることでは得られないメリットもあります。

----どういうことでしょうか?

内山:野菜が持つ栄養の絶対量と吸収量は、食べ方によって変わるんです。たとえば伊藤園の研究結果で、にんじんを茹でて食べたときのβ-カロテンの吸収率は、生で食べたときと比べて約34%も良かった。生の場合、かなり細かく咀嚼しないと、にんじんの細胞壁を壊せないため、β-カロテンが外に出てこないのです。

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伊藤園の内山修二さん

三城:「食べる」と「とれる」はイコールじゃないのです。とくに最近はよく噛んで食べない人も増えているので、そのまま食べることと、野菜飲料を飲むこと、最終的に体内に吸収される栄養価としてどちらのほうが高いかは、なかなか言い切ることが難しいんです。

野菜ソムリエサミットも認めた、伊藤園専用の「甘〜いにんじん」とは

----伊藤園の野菜飲料には、どんな特徴があるんですか?

内山:おいしさ、栄養、安心。この3つを届けることを常に考えています。こだわりのひとつが、伊藤園の野菜飲料専用に育てられた「朱衣(しゅい)」というにんじん。β-カロテンが通常の1.5倍以上あり、糖度も1.3倍くらいあります。加工用のにんじんなんですが、非常に甘く、『第5回野菜ソムリエサミット』(2010年12月開催)の生食部門で1位になったこともあるんですよ。

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伊藤園の野菜飲料専用に育てられたにんじん「朱衣」と一般のにんじんのβ-カロテンの比較

三城:それは生でも食べてみたいですね! 野菜飲料になるまでには、どんな加工をされているんですか?

内山:ナチュラルスイート製法と呼んでいるのですが、まず、青臭みの元であるヘタと皮を取り除き、にんじんを茹でてから搾っています。茹でることには3つのメリットがありまして、ひとつはにんじんに含まれるビタミンCの保持のために、破壊酵素アスコルビナーゼの働きを止められること。次に甘みを引き出せること。それから、亜硝酸態窒素の量を低減できることです。

----亜硝酸態窒素とは?

内山:にんじんが肥料を消化しきれなかったときに、芯の部分にためてしまう物質です。体内に取り込まれるとニトロソアミンという発がん性物質に変わるといわれているんです。また、赤ちゃんが摂取しすぎると、体内が酸欠状態になるブルーベビー症候群の原因になるともいわれており、いま日本では規制がないものの、FAO / WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)では1日あたりの許容摂取量を定めています。

この亜硝酸態窒素の量を低減させるには、茹でることが効果的だと農水省も推奨しているんです。伊藤園では亜硝酸態窒素がたまりやすい芯部分が大きく露出するようにカットしてから茹でています。体重30kgのお子さまが200ml紙パックで1日10本飲んでも問題ない値を目標基準にして管理しています。

----茹でる工程には、おいしさ、栄養、安心、3つの役割があるんですね。

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「野菜飲料は栄養不足」というメディア報道に対して、伊藤園はどう対応した?

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