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濃い味にNO!子どもの繊細な味覚を守る「隠れんぼハンバーグ」

濃い味にNO!子どもの繊細な味覚を守る「隠れんぼハンバーグ」

赤枝 いつみ

監修
赤枝 いつみ
公衆衛生分野での職務経験豊富な管理栄養士
  • 撮影
    志水あい
  • テキスト
    志水あい
  • 撮影
    志水あい

2017年10月16日[2018年04月11日更新]

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「おいしい」の基準は人それぞれですが、口に入れた瞬間に強く感じる「おいしい!」と、よく噛んで食べているうちにじんわり感じる「おいしい」、どちらがお好みですか? じつは、前者に偏りがちなお子様は要注意です。

小さな子どもに限らず、人は本能的に、甘いものや脂っこいもの、しょっぱいものなど、口に入れた瞬間に「おいしい!」と感じる、濃くてわかりやすい味を好む傾向があります。実際、カレーやラーメン、アイスクリームやチョコレートばかり食べたがるお子さんに悩まされているママ、パパも多いのではないでしょうか?

しかしこれらは、とりすぎると肥満や生活習慣病につながることが懸念される脂肪分や糖分、塩分の味。幼いころから濃い味中心の食生活を続けていると、早期に肥満や病気が生じる可能性があります。子ども時代につくられる食習慣が、子どもの未来をつくるのです。今回は、薄味でも食事を楽しめるポイントとともに、子どもが大好きなハンバーグにちょっとした工夫を加えて、親子で一緒に薄味を楽しめるレシピを紹介します。

志水あい

管理栄養士。武庫川女子大学 生活環境学部食物栄養学科卒業。桑沢デザイン研究所 戦略経営デザイン専攻修了。2004年にフリーランスの健康ライターとして独立。栄養素のはたらきを重視したレシピの制作や商品開発なども行っている。忙しいときでも手軽につくれる簡単レシピと、子どもの知育(自分で考えて進んでいく力を養う子育て)につながる食育・親子料理が得意分野。最近は、食べ物をもっと深く知るために、作物の育て方などを勉強中。

http://itadakimasu.ldblog.jp/

大人の味覚と子どもの味覚。じつは子どものほうが優れている

大人と子どもを比べると、「大人のほうが優れていて、子どもは未熟」と考えがちですが、じつは子どものほうが優れていることがたくさんあります。そのひとつが「味覚」。食べ物に含まれる物質を認識する能力です。私たちは、舌にある「味蕾」という器官で味を感じています。

味蕾で感知される味には、「甘味」「旨味」「塩味」「酸味」「苦味」の5つがありますが、そのなかで子どもが好むのは、甘味、旨味、塩味の3つ。エネルギー源になる糖質による甘味、からだをつくるアミノ酸による旨味、体液のバランスを維持するために必要なミネラルによる塩味は、人が本能的に欲する味なのです。一方、酸味と苦味は、それぞれ腐敗物、毒物に近いものとして脳が感知するため、子どもは苦手とします。

味蕾の数は新生児の場合で成人の1.3倍です。また、味を感じる能力は大人よりも子どものほうが高く、より薄い味も認識できるとされています。成長とともに苦味のある野菜が食べられるようになったり、コーヒーやビールなど苦みのある飲み物を好むようになったりするのは、学習効果によるものと考えられていますが、歳を重ねて繊細な味を感じにくくなることも関係しているのかもしれません。

濃い味ばかりだと、早すぎる生活習慣病の原因にも。子どもは薄味で育てよう

繊細で優れた味覚を持っているはずなのに、子どもは甘いものや脂っこいもの、塩分が多い食べ物など、わかりやすい濃い味を好む傾向があります。子どものからだはたくさんの栄養素が必要なので、効率よく摂取できる食べ物を求めるようです。お菓子やジュースを欲しがるのも、野菜より肉を食べたがるのも、麺類などのあまり噛まなくても味がわかるものを好むのも、仕方がないことかもしれません。

だからといって、子どもが好むものばかり食べさせるのは考えもの。お菓子やジュースには糖質、脂っこい肉には脂質、ラーメンのスープなどには塩分がたっぷり。いずれの栄養素もとりすぎると、肥満や生活習慣病につながりかねません。

子どものころに身につけた味の好みはなかなか修正できません。将来のためにも、まだ繊細な味を感じやすい子どものうちから、薄味の料理をよく噛んで味わう習慣をつけましょう。また、エネルギーはお菓子やジュースではなく、ごはんやパンなどの炭水化物から摂取するのが理想です。肉は脂の多い部位を避けたり、魚にしたり、塩味の代わりに旨味や酸味を利用するなど、できることから始めてみましょう。

「旨味」と「楽しみ」がつまったハンバーグ

濃い味が好きな子どもたちにとって大人気のメニュー・ハンバーグ。いつもこればかりを食べたがって、他の野菜などを食べてくれないとお悩みのママ、パパも多いかもしれません。しかし、ちょっとした工夫を加えるだけで、親子で薄味を楽しめるレシピに! ひき肉のなかに隠されたいろんな素材たちが、子どもたちの味への興味を惹きつけます。食べるだけで繊細な味覚を鍛えられる。そんなハンバーグをつくってみましょう。

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材料(2~3人分)

・合いびき肉:200g
・たまねぎ:1/2個(100g)
・卵:1個
・パン粉:20g
・かつお節:5g
・うずら卵:4個
・キャンディーチーズ:4個
・ミニトマト:4個
・サラダ油:大さじ1
・つけ合わせ野菜(レタス、キャベツ、ブロッコリー):適量

つくり方

1. たまねぎはすりおろす。

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2. 1に卵、パン粉、かつお節を入れて混ぜ、合いびき肉を加えてよくこねる。かつお節が大きい場合はキッチンバサミなどでカットしながら加える。

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3. 2を12等分し、うずら卵、キャンディーチーズ、ミニトマトを1個ずつ包みながら丸める。

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4. フライパンにサラダ油をしいて中火にかけ、3を並べて焼く。焦げ目がついたらひっくり返し、蓋をして弱火にして3、4分加熱する。

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5. 火が通ったら、つけ合わせ野菜と一緒に皿に盛りつける。

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薄味が好きになるためのポイント

  • 後からはできるだけ調味しない
  • 揚げ物にソース、おひたしなどにしょうゆなど、食べる直前に調味料をプラスする習慣を止めてみましょう。あとから調味料を足す習慣が元々なければ、大人になっても薄味でおいしく食べられるはずです。どうしても味つけが必要なときは、少量の調味料を小皿に入れ、つけて食べるようにしてみましょう。

  • 「旨味」を含む食品を活用する
  • 塩分の多い食事に舌が慣れてしまうと、減塩した料理が物足りなく感じてしまいがちです。そんなときは、「塩味」以外の味を加えてみましょう。おすすめは「旨味」です。昆布、かつお節、煮干し、干ししいたけなど、旨味のある食品はいろいろあります。だしをとって利用したり、料理に混ぜたり、上手に活用してみましょう。

  • 「旬の素材」を活かして調理する
  • 本来、素材のおいしさはシンプルな味つけによってより引き立ちます。逆に言うと、素材のおいしさがいまいちだと、シンプルな味つけでは引き立たせることができず、濃い味つけになってしまうのです。おいしい食品素材の代表は「旬のもの」。季節に合うものを、食べごろを見計らって、素材の味を消さないように味つけしてみましょう。無理に薄味にしようとしなくても、自然に薄味になるはずです。

  • よく噛んで味わえる料理を楽しむ
  • ハンバーガーやラーメンなど、あまり噛まずに食べられる食事ばかりを続けていると、食材の表面にばかり舌が触れるので、口に入れた瞬間に感じられるような「濃い味」を好みやすくなります。よく噛んで「おいしさ」を味わうための習慣を身につけるためには、お米や野菜を使ったおかずなど、よく噛まないと飲み込みにくい料理を用意してみましょう。シチューなどのやわらかい食感の料理は、具材などをひと口で食べきれないサイズにすると、噛む回数が増やせます。

  • 味について質問する
  • 「何が入っているでしょう?」「いつもと違う味にしたのがわかるかな?」「いつもの味だけど、どんなところが好きか教えて」など、ゆっくり味わって食べたくなるような質問を子どもにしてみましょう。小さい子でも、一生懸命味わって考えて答えてくれるはず。味を表現する機会が増えると、語彙力もアップしますよ。

よい食習慣は一生の財産。味わって食べることを楽しんで

今回は、子どものころから薄味を楽しむことのメリットやレシピをご紹介しました。しかし、それを一方的に押しつけるだけでは、子どもにとっても薄味が禁欲的で味気ないものというイメージに感じてしまいます。自然と薄味に親しむためのコツは、単に「薄味」と思わず、味わって食べる楽しみを与えてくれる「食習慣」と捉えることではないでしょうか。

「かくれんぼハンバーグ」であれば、「ハンバーグのなかに3つのおいしいものを隠したから当ててみて!」とクイズを出したり、「卵とチーズとトマトを入れたよ。どれがおいしかったか教えて!」と好みをたずねたりするのもおすすめです。子どもに味わって食べることを促せるだけでなく、食を通じた親子のコミュニケーションにもつながります。

また、子どもが食事に調味料を追加しようとしたら、「隠れている味がわからなくなるよ」「隠し味も当ててほしいからそのまま食べてみて」と伝えつつ、親が率先して食べてみてください。

子どもを薄味で育てるには、親も薄味で生活するのがいちばん! 薄味に慣れると複雑な味つけが必要なくなるので料理が簡単になり、子どもと一緒に料理がしやすくなるというメリットもあります。そして何よりも、よい食習慣は子どもにとって一生の財産です。家族みんなで薄味を楽しんで健康なからだを手に入れましょう!

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