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おいしさ・栄養・安心。3拍子揃った野菜飲料開発の苦労とは

おいしさ・栄養・安心。3拍子揃った野菜飲料開発の苦労とは

赤枝 いつみ

監修
赤枝 いつみ
公衆衛生分野での職務経験豊富な管理栄養士
  • 撮影
    江森康之
  • テキスト
    タナカヒロシ
  • 撮影
    江森康之

2017年07月06日[2018年04月11日更新]

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業界の反対を押し切って実現した、原料原産地の表記

内山:原料原産地の表記をしていることも、伊藤園の野菜飲料の特徴です。当たり前に感じるかもしれませんが、飲料業界としては異例のことで、導入するときにはむしろ業界団体からも反対されました。

----なぜでしょう?

内山:原産地を表記すると、不作になっても違う国の原料を使うことができないのです。たとえば、にんじんの原産地を「アメリカ、ポーランド、日本」と書いたら、必ず3か国のにんじんを、「アメリカ>ポーランド>日本」の比率で使わないと、表示違反になってしまう。たまたまアメリカ産のにんじんが少なくて、ポーランド産がたくさんあっても、比率を入れ替えることさえできないのです。

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「1日分の野菜」900gボトルの原料原産地表記

----そんなデメリットがあるのに、なぜ表示しているのですか?

内山:これは2007年に始めたのですが、当時中国産の冷凍ほうれん草から残留農薬が検出された事件があったのです。メディアで報道された翌日には、弊社のお客様相談室に100件以上の問い合わせをいただきました。「野菜飲料に使われているほうれん草の産地はどこですか?」と。

----事件とはまったく関係ないですよね。

内山:そうなんですが、これを発端にお客様が知りたい情報なら大変でも表記するべきではないか、と社内で議論になったのです。弊社の会長に「業界は反対していますが、お客様は望んでいます」と相談したら、「お客様が望んでいるなら、業界を脱退してでもやりなさい」と言われまして。結局、業界の人たちを説得して、自主的に始めたのです。

1日の栄養を満たす野菜飲料開発の陰に、あくなき企業努力あり

----主力商品の「1日分の野菜」は、どういうコンセプトでつくられたのですか?

内山:初代の「1日分の野菜」は2004年5月発売なのですが、これは厚生労働省による「健康日本21」で設定された、1日分の野菜の目標摂取量、350gを満たす野菜飲料をつくろうということから始まりました。

商品を考えているときに、たまたま見たテレビである大学の先生が、α-カロテン3mg、β-カロテン6mg、リコピン10mgの比率で野菜をとったら健康に良いという研究成果を紹介されていたのです。それを見て、この比率を目標にしたらどんな味になるか試した結果、非常においしい野菜飲料ができました。それで、にんじんとトマトを主体にブレンドした野菜飲料になりました。

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伊藤園「1日分の野菜」

----他の栄養成分に関してはいかがですか?

内山:じつはそれについても2007年に事件が起きまして。朝日新聞さんで『「1本で1日分の野菜」実は栄養不足』という記事が出たのです。350gの野菜の栄養素と比較したときに、野菜飲料の栄養が足りていないという話でした。

これに対して、私たちも反論はありました。350gの野菜は使っていても、加工や殺菌の工程で失われる栄養素はどうしてもありますし、料理で食べるときだって、調理方法によって栄養素は失われる。しかし、このときも会長に呼ばれまして、「1日分の野菜と書いてあったら、そのまま食べたときと同じ栄養がとれると思うのがお客様の心理だ」と。

----たしかに一理ありますね。

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内山:それで3か月後、350gの野菜の主栄養素がそのままとれる設計に改良した商品に切り替えました。野菜だけで満たせなかったビタミンC、カルシウム、マグネシウムについては、後から補填をさせていただきました。ただこれも、これから1つずつ自然素材に変えていこうとしています。あと数年で達成することを目標にしているんですよ。

三城:殺菌のために加熱すると、どうしてもビタミンCは減ってしまうと思いますが、栄養成分表示は加熱前のものなのですか?

内山:いえ、加熱後の数値です。もちろん保存期間によって栄養素は自然に減少してしまうのですが、賞味期限ぎりぎりでも表記の値に保てるようにやっています。たとえばビタミンCは60〜134mgと表記しているのですが、だいたい9か月で3割が減少するので、出荷時には最低でも100mgくらいになるように調整しています。

----管理栄養士の視点から見て、「1日分の野菜」の栄養価はいかがですか?

三城:野菜飲料だけで、食事の栄養を代用できるわけではないので、単純な評価はできないのですが、企業努力を重ね、心を込めてつくられた製品であることは、野菜飲料を選ぶときのひとつの基準にできると思います。ここまで細かく見えない工夫を積み重ねているとは、話を聞いて驚きました。

ランチのお供や料理の味つけにも。賢く使って栄養リッチに

----管理栄養士は野菜摂取に関して、どんな指導をされることが多いのですか?

三城:まったく食べていない方であれば、まずはなんでもいいから野菜を意識してもらうこと。特に外食中心の方の場合、野菜飲料を手に取ってもらうところから始めることも多いですね。自炊をする方なら、味噌汁に野菜を入れましょうという話もしますが、それすら難しい方も多いんです。

----お弁当に野菜飲料を1本加えるだけでも、栄養バランスはかなり変わるものですか?

三城:そうですね。栄養価を考えると、既製品の生野菜のサラダを食べるより、野菜飲料のほうがいいんです。

内山:野菜飲料に表示されている栄養成分は確実にとれますので、参考にしていただきたいです。

三城:いまは食事に手間をかけられない人も多く、なるべく手軽に栄養素を補わなければならないという現実もあります。野菜飲料だけ飲めばいいということではないですが、たとえば朝何も食べないなら家を出る前に飲むとか、お昼に野菜が足りないならプラスするとか、うまく栄養の補足に使ってほしいですね。

----他にも野菜飲料を有効に取り入れる方法はありますか?

内山:いま、三城先生とご一緒に、「1日分の野菜」を使ったレシピブックをつくっているんです。いずれ店頭でお配りさせていただく予定です。単身者や核家族が増えたことで、900gのペットボトルは飲みきれないという声を聞くようになりまして。でも、余った野菜飲料を使っていただければ、お料理の栄養もちょっとリッチにできますよね。

三城:野菜飲料の甘みを活かせば、塩や砂糖を入れすぎずに済みますし、味に深みも出ます。忙しい主婦の方でも、簡単に安定した味つけができるレシピになっていると思います。

----今後、挑戦してみたい野菜飲料はありますか?

内山:そこは秘密にさせていただきたいのですが、われわれの商品企画のポリシーは、「マネはされてもマネはしないこと」。これからも新しい発想で、価値ある商品を生み出していきたいですね。

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インフォメーション

伊藤園「1日分の野菜」シリーズ
https://www.itoen.co.jp/yasai/ichinichibun/

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