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水野裕子と学ぶ、スポーツ栄養学って何?②(後編)低炭水化物の怖さ

水野裕子と学ぶ、スポーツ栄養学って何?②(後編)低炭水化物の怖さ

鈴木 志保子

監修
鈴木 志保子
全日本代表の栄養指導も行う公認スポーツ栄養士
  • 撮影
    相良博昭
  • テキスト
    江原めぐみ
  • 撮影
    相良博昭

2017年11月20日[2018年09月03日更新]

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アスリートだって気になる「低炭水化物ダイエット」

水野:スポーツ栄養士の目から見て、偏った食事をするプロスポーツ選手っていますか?

橋本:以前に比べると、極端に偏った食事をする選手は少なくなりました。ただ現在、スポーツの世界でも流行っていて、とても困ったなあと思うのが、低炭水化物ダイエットです。

水野:私もよく、いろんな方から聞かれます。スポーツの世界だけでなく、日本中で流行っていますよね。低炭水化物に限らず、メディアがわかりやすい栄養の情報ばかりを取り上げるから、情報が一人歩きしてしまう。だからこそ、先生たちのお力をお借りして、栄養に関する正しい情報を少しずつ世間に伝えていきたいと思っていて。

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橋本:いちばん影響があるのは、アスリートの口から語ってもらうことかもしれませんね。激しい練習をしているスポーツ選手が炭水化物を大幅にカットすると、集中力に欠け、疲れに直結してしまうんです。実際に低水炭化物ダイエットを実践しているラグビー選手が練習中に倒れた話を聞いたことがあります。

水野:怖いですね。低炭水化物の食事がうまくいっていない選手には、どうアドバイスをしているんですか?

橋本:選手が炭水化物を敬遠する理由は、やはり体脂肪率を増やしたくないという思いがあるから。そこで、まずは少しずつごはんの量を増やしてみようと提案しています。それを始めてみて、疲れが溜まりにくいことを実感すれば、選手たちは自らご飯の量を増やすようなります。

選手が気にしている体脂肪率に配慮しつつ、「増えていないようなら、ごはんの量を少しずつ増やしていき、もし体脂肪率が増えてきたら、とりすぎかもしれないので、少し量を減らしてみては」と言うと、選手も安心してくれますね。

水野:炭水化物の食べ方については、一般の人も気になるところだと思います。

橋本:日中に活動して夜は寝るという、一般的なライフスタイルの方なら、活動量の多い朝と昼にしっかり食べて、夜は控えるなど、タイミングに合わせて量を調整するのがおすすめです。また、ご飯やパン、麺類などの主食以外に、糖質の入った飲み物(コーヒー、オレンジジュースなど)や、甘い菓子、果物などから糖質をとりすぎていないかどうかもチェックする必要があります。健康的な成人の場合、毎食、茶碗に1杯程度(男性150g、女性120g)は食べるようにしたいですね。

極端にごはんを食べないというダイエット方法は、もちろん短期的な効果はあると思います。しかし糖質が足りないとイライラしやすくなり、満腹感や満足感が得られないため、長続きせず、リバウンドしやすくなってしまいます。気をつけたほうがいいですね。

スポーツで活躍したいなら、とにかくお米を食べよう!

水野:炭水化物のなかでも、橋本先生がおすすめの食材って何でしょうか?

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橋本:私は日本人として、お米をもっと食べるべきだと思っています。スポーツの世界では、海外で活躍する選手の影響からか、炭水化物をとるならパスタというイメージがあるんです。もちろんパスタもいいのですが、お米のほうが脂質の量が少ないですし、調理をするときにも油を使いません。高炭水化物で、低脂肪、しかもよく噛まないといけないので、満足感も得られる。

じつはいま、世界中のアスリートからお米が大注目されているんです。でも、肝心の日本人がお米のよさを認識していない。お米をを主食にすれば、脂質を抑えながら、筋肉や持久力もつく。疲れもとれて、集中力もアップします。「スポーツするなら、お米!」このことは、2020年の『東京五輪』に向け、日本の競技界でどんどんアピールするべきだと思いますね。

水野:子どもをアスリートにしたい親御さんにも、ぜひ伝えたいですね。

橋本:そうですね。私はF・マリノスで、将来サッカー選手になりたい子どもたちやその保護者に向けた栄養セミナーを年に1回やっていますが、「とにかくお米が大事です」と話すと、お母さまたちはとてもびっくりします。

「成長期のからだづくりにはたんぱく質が必要、だからとにかくおかずをたくさん食べさせないと!」と考えているお母さま方が多いんです。でも私は、「筋肉をつけたければ、ごはんを食べさせてください」と、強調してお伝えをするようにしています。

水野:それは、どうしてですか?

橋本:いまの子どもたちの多くは、1日に必要なエネルギー量が十分にとれていないんです。独立行政法人日本スポーツ振興センターが行った、「平成22年度児童生徒の食事状況等調査報告書」によると、推定エネルギー必要量を超えていない児童生徒(小学生と中学生)が約半数いたことが報告されています。エネルギーが十分にとれていない状態でおかずばかり食べても、食事から摂取したたんぱく質がエネルギーとして使われてしまう。結局、筋肉にはならず、からだが大きくならないんです。

お母さま方のなかには、「うちの子は食が細い」と話す人が多い。私は、トレーニングの一貫としてごはんを食べる練習をさせてあげるよう伝えています。トップ選手も、食事はトレーニングとしてとらえています。一口ずつでもいいから、食べる量を増やしていくことが大事。これもまた、時間をかけて継続していくしかないのです。

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管理栄養士はコワくない。理想的なごはんを毎回食べる必要はない

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