子どもたちも知識を得れば、いい食べ物を選べるようになる水野:子どもの食が細くなり、栄養不足になっている原因は何でしょうか。 橋本:ひとつには、生活リズムの変化がありますね。夜更かし、朝寝坊が増え、朝ごはんを食べる時間がない。子どもたちのからだづくりのためにはまず、ご両親も含め、早く寝て、いつもより10分でいいから早く起きて、朝食を食べられる環境を整えることです。 水野:家庭全体で気をつけてあげる必要があるんですね。 橋本:そうですね。また、現代の子どものエネルギー不足の原因として、自分の好きなものだけ好きなときに食べたいという考えの子どもが多いことも挙げられると思います。学校給食でも嫌いなものは残してしまう、自分の好きなおやつだけコンビニで買って食べ、家の食事が食べられなくなる、といったこともよく耳にしますね。 水野:昔と比べて、食べ物の選択肢があふれていますからね。 橋本:ええ。とくに子どもが大好きなのが、スナック菓子や甘い清涼飲料水。でも、そんな子どもも、栄養セミナーでなぜ好きなものばかり食べていてはいけないのかを理解すれば、きちんと補食(おやつ)を選んで食べるようになるものです。「500mlの炭酸飲料には、スティックシュガーが14本分くらい入っているんだよ。こんなにお砂糖をとったら、お腹がいっぱいになって、食事がとれなくなっちゃうよね......」という話をすると、びっくりして水や麦茶に切り替えるようになります。 小学校高学年くらいになると、自分の頭で考えられるので「じゃあ代わりに100%のオレンジジュースを飲んだほうがいいのかな?」と聞いてきてくれます。コンビニの菓子パンも、基本はカレーパンやチョコパンが人気ですが、菓子パンの写真を見せながらクイズ形式で脂質の量を伝えると、自然とぶどうパンやあんぱんを選ぶようになる。 こんなふうにゲーム感覚で、コンビニ食品や外食の選び方を伝えると、子どもたちは素直に楽しみながら学んでくれます。こちら側の伝え方次第です。栄養士はどうしても栄養学にとらわれてしまいがちですが、子供たちの生活に密着した話をすれば、すんなりと受け入れられるのではないかと思います。 理想だけじゃなく、忙しい現代人にあった食べ方を提案することが必要水野:それは子どもだけでなく、大人に対して伝えるときにも言えることですね。実際、全部の食事を手づくりにしてコンビニ食品は買わないでくださいなんて言っても、無理な話ですものね。 橋本:まさにそのとおり。いまどき、すべて手づくりにしてくださいなんて言っていたら、誰からも耳を傾けてもらえません。忙しくて、時間がないのが当たり前。私たち管理栄養士でさえ、毎食、理想的な食事がとれているわけではないんです。無理のない範囲で、いまより少しでも栄養バランスのよい食べ方をいかに実践してもらうか、提案していく必要があります。 水野:管理栄養士に相談すると、自分の食生活を否定されるのではないか、全部手づくりにしないといけないのではないか、と恐れる人も多そうです。 橋本:そういうイメージを変えていくのも管理栄養士の課題ですね。選手の奥さまたちにさえ、栄養セミナーというと叱られそうだから行きたくない、と思われてしまいがち。子育て中なら少しでも時短になるレシピを用意したり、外食のときの選び方を伝えたりといったことから始めれば、もっと身近に感じてもらえると思います。 水野:たしかに、伝え方ってとても大事ですね。今日は本当にたくさん勉強になるお話を聞かせていただき、ありがとうございました。 橋本:こちらこそ! 仕事と栄養の勉強、どちらも頑張ってくださいね。応援しています。 |