「これさえ食べていれば確実にがんを予防できる」という魔法みたいな食品はありません。
現状で科学的根拠のある食べ方を、あえていうとすれば「バランスよく食べる」「野菜や果物をたくさん食べる」「食塩は控えめにする」くらいでしょうか。
そして、このような食事は、図らずも生活習慣病の予防にも効果的なものですから、ぜひとも、毎日実行してほしい食事なのです。
"おいしさ"も重要なポイントです
バランスのよい食事とは、身体を作る材料となるたんぱく質、エネルギーのもととなる糖質と脂質、体の調子を整えるビタミンとミネラルといったいわゆる5大栄養素がまんべんなくとれる食事のことです。
「健康のため」と考えると、このような栄養素にばかり目がいきがちですが、これに加えて、見た目がきれいで、食べておいしいと感じられる食事でなければ、習慣として継続していくことができません。
この点もとても重要です。忘れないようにしましょう。
おいしく、バランスのとれた献立のコツ
栄養バランスがよく、かつ、おいしい献立というのは、どのように組み立てればいいのかを考えてみましょう。
基本は、主菜(メインのおかず)と副菜(サブのおかず)の、材料・調理法・味付けなどが重ならないようにすることです。
例えば・・・
- メインのおかずの材料(肉か魚かなど)と、調理法(生・焼く・蒸す・炒めるなど)を決める。
- サブのおかず(野菜中心)の調理法と味付けをメインとは変える。
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メインのおかずのボリュームや材料のとり合せによって、汁物やサブのおかずを調整する。
- 献立例
野菜・果物の食物繊維に注目 食塩中のナトリウムの排泄を促します
野菜と果物は、合わせて400~500gが一日の目安です。
野菜や果物には、食塩中のナトリウムの悪影響を緩和するカリウム、腸内の有害物質を体外に排泄する食物繊維、発がんを抑える上で重要な抗酸化作用のあるビタミンやミネラルなどが豊富に含まれています。
めざす量の数値にこだわってたくさん食べることよりも、「毎日欠かさずに食べる」を意識しましょう。
- 食塩摂取量が多くなる食事は、がん(特に胃がん)や高血圧のリスクを高めます。
1日の食塩摂取量は男性は8g、女性7g未満をめざしましょう。 塩味を抑えても、ダシをしっかりとる、酢やハーブやスパイスなどで味付けに変化をつけると、物足りなさを感じることなく食べられます。
- 食物繊維をとることで得られるメリットは?
食物繊維は胃でも腸でも消化・吸収されずに体外に排泄されます。
そのため、食物繊維は栄養学的には何の役にも立たないものと考えられてきました。食物繊維は、長い間「栄養素」の仲間として認識されていなかったのです。しかし、半世紀ほど前に、食物繊維の摂取量が多い人たちには、先進国の人びとの間で急増していた大腸がんが少ないことがわかり、食物繊維に注目が集まりました。
そして、「第6の栄養素」と呼ばれるようになりました。食物繊維は、食べたものの胃や小腸内での消化・吸収をゆっくりにして、食後すぐの血糖値上昇を抑えます。また、腸内を通過する間に腸内や腸壁にある有害物質を包み込んで体外へと排出します。
さらに、腸内にすみついて腸内環境をよくしてくれている腸内細菌のエサになります。
大豆製品(納豆・豆腐類)を積極的に食べましょう
動物性食品(肉や魚)は良質のたんぱく質を多く含むという点で優れた食品ですが、食べ過ぎると大腸がんのリクスを高める可能性があります。
日本人は良質の植物性たんぱく質を豊富に含む大豆製品をたくさん食べる習慣があります。納豆や豆腐類は乳がんや前立腺がんを予防する効果が示されている食品です。
緑茶やコーヒーも、がん予防に効果がある
緑茶をよく飲む女性では胃がんの予防効果が、そして、コーヒーをよく飲む人は飲まない人に比べて肝がんの発生率が低いことが示されています。
ただし、飲食物をあわてて熱い状態でとることは食道の炎症やがんのリスクを高めます。ゆっくり楽しみながら、少し冷めたくらいのものを飲むとよいでしょう。
まとめ
食品や栄養素をがむしゃらに多く摂取するほど、がんのリスクが低くなるということはありません。摂取量が多くても問題になることはありますし、少なくてもがんのリスクが上がることもあります。"バランスよく"適量食べることが一番大切なのです。
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