イベント
はじめて学ぶ!動くと食べるで糖尿病予防「健康づくり提唱のつどい」レポート~「食べる」編~
- テキスト
- ニュータス編集部
2018年09月25日[2019年01月07日更新]
好きなものを自由に食べている毎日から、健康診断で「血糖値が高め」と指摘されて、急に食事に気をつけなければならなくなったとき。 糖尿病の進行を防ぐ3つのポイント"食べる編"の講師は、神奈川県立保健福祉大学教授の佐野喜子先生と、株式会社ヤクルト本社中央研究所分析試験研究所主席研究員の高橋琢也先生の二人。 佐野先生はまず、「血糖値が少し高くても、重症化せずに生活していけるような食事の話をしていきます」と参加者の皆さんの気持ちをやわらげました。"人生100年時代"と言われ、長生きするには、健康でいられる期間をできるだけ長くすることが大切です。佐野先生は、「糖尿病になっても、血糖値をコントロールできれば、糖尿病でない人と同じように健康に長生きすることが可能であり、それが糖尿病治療の目的です」と話します。 <糖尿病治療の流れ>
このように、食事と運動は、糖尿病の進行を防ぐためには、ずっと気をつけていかなければなりません。もちろん、糖尿病にならないように予防するためにも、食事と運動は大切です。佐野先生は、糖尿病の予防、あるいは重症化予防のための食事では、次の3つのポイントが重要であると話しました。
血糖値のメカニズムさて、糖尿病では、"血糖値"という言葉が気になります。血糖値とは、血液中の糖の量を示す値のことですが、食事をすると血糖値は上がり、時間が経過するとホルモン(インスリン)の影響で血糖値は下がっていきます。 この上がり・下がりが極端になると、血管に負荷がかかり、さまざまな症状が現れます。例えば、目の毛細血管に症状が現れると、視界の一部が黒くなったり、視力が低下したり、さらに悪化すると失明に至ってしまいます。上記のポイント3「1日3回ほぼ均等量を、ほぼ同じ時間帯に食べる」ことが大切なのは、このためです。 佐野先生は、「糖尿病は血管の病気と言われています。朝食を抜いた状態で昼ご飯を食べると、昼食後に一気に血糖値が上がります。朝食も昼食も抜いて夕飯を食べると、夕食後に急激に血糖値が上がります。血糖値が一気に上がることで、血管に負荷がかかり、血糖値も下がりにくくなっていきます。自分の血管にやさしい食事の仕方をしましょう」と、アドバイスをしました。
腸内環境は糖尿病予防にも大切食事や運動の習慣を改めようとするとき、私たちは「目標」を設定します。佐野先生は、「野菜を増やす」、「たくさん歩くようにする」などのよくある目標を、「曖昧です!」と警鐘を鳴らしました。 佐野先生の目標設定のコツは、「夕食に2皿分140gの野菜を食べる」、「毎週木曜日は禁酒する」、「平日は1日8,000歩く、休日は10,000歩く」というように、"いつ・どれくらい"を明確にして、自分が実践しているシーンをイメージできる内容で設定すること。そして、○・△・×で毎日必ず評価できる内容にすることです。 さらに、食べた食事がきちんと栄養として吸収されて働くためには、腸内環境が整っていることが大切です。この点については、高橋先生が詳しく解説しました。「最近では、脂肪の多い食事をすると腸内細菌叢が乱れて、腸内細菌やその構成成分が血液中に移行して、肝臓や脂肪組織で炎症を起こしてしまい、メタボリックシンドロームにつながりやすいことが分かっています」と報告しました。 ダイエットの1つとして、あるいは糖尿病の予防のために取り組んでいる人も少なくない「糖質制限」ですが、糖質の摂取量を減らすことによって、脂肪の摂取量が相対的に増えてしまう人もいます。糖質を制限した食事では、食後の血糖値は上がりにくくなり糖尿病の予防につながりますが、脂肪の摂取量が増えることで腸内環境が乱れ、メタボリックシンドローム(肥満や糖尿病の予備群)になるリスクが高まります。 高橋先生によると、「乳酸菌 シロタ株を含むプロバイオティクス飲料を継続して飲んでいた2型糖尿病患者さんは、腸内フローラが改善し、血液中に腸内細菌が移行するのが抑制された」という研究結果もあります。糖尿病や、その予備群のメタボリックシンドロームを予防するためにも、脂肪の摂取は控えめにして、腸内環境を常に良い状態にしておくことが大切です。 まとめ食事と運動は、糖尿病の予防にとって車の両輪のようなもの。動く編で学んだウォーキング(有酸素運動)や筋トレとともに、食事のポイント1~3を守って、自分にとって楽しんでできそうな食事の目標を設定してみましょう。 毎日・毎食こまめに食事のチェックをすることで、食べ過ぎ・飲み過ぎをやめられるだけでなく、長期間にわたって必要な栄養素が不足してしまう事態を防ぐことができます。糖尿病の予防のための食事は、ほかの病気の予防にもつながるのです。 |