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「市民公開講座」免疫を味方にして新型コロナウイルスに負けない 第41回「健康づくり提唱のつどい」

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    ニュータス編集部

2020年07月28日[2020年07月28日更新]

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2670_1.jpg新型コロナウイルスに感染しないためには、「免疫を上げるといい」とよく聞きます。では、どうしたら自分の免疫を上げることができるのでしょうか? 今年はオンラインでの開催となった市民公開講座「健康づくり提唱のつどい」((公社)日本栄養士会主催、(株)ヤクルト本社協賛)では、「免疫を味方にして新型コロナウイルスに負けない」をテーマに、免疫の専門家に解説をしていただきました。

自然免疫+獲得免疫=My免疫!

 免疫について解説してくださったのは、順天堂大学大学院医学研究科の准教授で免疫学を専門に研究している竹田和由先生です。日本栄養士会鈴木志保子副会長がお話をうかがいました。

2670_2.jpg

 そもそも免疫とは、どのようなものでしょうか?
「免疫とは、漢字のとおりで、疫(病気)を免れる、病気にかからないようにするための体の反応です」と、竹田先生。
 私たちの体の中では、体の外から入ってきたばい菌やウイルスなどの異物を排除しようと、血液中やリンパ節にある「リンパ球」という丸い細胞が働いています。それが、免疫です。その働きのおかげで、私たちの体は病気にならずに済んだり、病気になっても回復できたりするのです。 

 免疫には2種類あります。
 1つは自然免疫で、もう1つは獲得免疫。この2つが共に連携して働いてくれることで、自分の体を守る免疫ができています。
 自然免疫は、もともと私たちの体に備わっている免疫で、初めて遭遇した菌やウイルス対してもすぐに反応できるのですが、そんなに強くはありません。一方、獲得免疫は生きていくなかで獲得していく免疫で、初対面の菌やウイルスにはすぐに反応できないのですが、ゆっくり反応して学習し、記憶していきます。
 毎年インフルエンザにかからないようにワクチンを打つのは、インフルエンザウイルスを無毒化したものを体内に入れることで、体に「こんなウイルスだよ」と獲得免疫に学習をさせておき、実際に本物のインフルエンザウイルスが流行した際には獲得免疫に働いてもらい、感染しないようにするためです。

 竹田先生は、自然免疫と獲得免疫の違いを、「不安定/安定」や「お金があまりかからない/とてもかかる」という表現でも教えてくれました。
 自然免疫が「不安定」なのは、いろいろな影響を受けるからです。加齢や、食生活、運動、睡眠などの生活習慣によって、免疫の力は上がったり下がったりします。一方の「安定した」獲得免疫を得るには、病気に一度かかった経験が必要だったり、病気になる前にワクチンを打っておかなければなりません。したがって、獲得免疫には「お金がかかる」というわけです。

2670_3.jpg このイラストを見てみましょう。
 左側が体の外側、右が体の内側を表しています。体の外側のほうには自然免疫がいて、獲得免疫は奥に控えています。赤の異物(菌やウイルス)が体に入ってくると、すぐに反応することができる自然免疫がまず攻撃にいきます。と同時に、飛脚のような働きをする樹状細胞が「赤が来たぞー!」と獲得免疫に情報を伝えるために走り出します。すると、獲得免疫の中の異物の赤に対抗できるものだけが活性化されて、攻撃に加わります。これによって、赤の異物は体から排除されて、私たちは病気から回復します。
 「体の中に異物が侵入してから排除されるまでのこの一連の流れには、どのような病気でもだいたい10 日から2週間程度かかります。インフルエンザなどで学校や職場を決められた日数だけ休まなければならないのは、このワンサイクルにかかる時間が必要ということです」(竹田先生)

自然免疫を高めるための「3つの秘訣」

 先ほどのイラストで、獲得免疫は菌やウイルスに対して強い力を発揮できることがわかりました。しかし、獲得免疫は、1種類の異物に対してピンポイントでしか働けません。いくつもの病気を防ぐためには、それぞれのワクチンが必要で、それぞれの獲得免疫を活性化させなければならず、費用がかかりますし、ワクチンの接種によって熱が出るなどの副作用を伴うこともあります。
 一方の自然免疫ですが、竹田先生は「戦う力は強くないものの、いろいろな病気になりにくく、治りやすいという力がある。生活の中で自然免疫を上げておくのはいい方法です」と話します。
 竹田先生が、自然免疫を上げるための3つの方法を伝授してくださいました。それは、「食事・運動・あっはっは!」。

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 上の図を見てみましょう。
 私たちの体の免疫を上げるには、これだけの栄養素がかかわっていることがわかっています。したがって、ある特定の1つの栄養素が免疫に効くということはありません。食事からとるいくつもの栄養素が総合的に作用しながら、免疫の働きに作用してくれているのです。
 つまり、「栄養バランスよく食べる」ということなのですが、言葉で言うのは簡単でも、多くの人にとっては難しい、大変、面倒くさいというのが実際のところです。
 「栄養の日・栄養週間2020」の企画として、(公社)日本栄養士会ではインスタグラムで「#予防めし」を使って、全国の管理栄養士・栄養士がバランスよく食べるコツを伝えています。参考にしてみてください。 

 免疫を上げるには、運動も大切な要素です。しかし、運動すればするほど免疫が上がるわけではなく、ハードな運動をしたほうがよいということでもないようです。
「激しい運動をすればするほど、運動をしている間はナチュラルキラー細胞(NK細胞)という自然免疫は活性化するのですが、やめると元の数値よりも下がってしまうことがわかっています。ですので、アスリートではない一般の人であれば、心地よいと感じる程度の運動を週に2〜3回程度やることが、健康を増進しながら免疫を徐々に上げていく方法だと考えられます」 

 免疫を上げるためのもう一つの秘訣は、大笑い。微笑み程度ではダメだと竹田先生は指摘します。
「あっはっは、と笑うとき、私たちは腹筋を使っています。運動で腹筋をし続けることは難しいのですが、大笑いをして休んで、また大笑いをして...という休憩を挟んだ繰り返しの運動がよいようです。私の研究では、同じ時間を過ごしていても、大笑いした人はNK細胞が活性化されましたが、笑わなかった人は活性化どころか数値が下がってしまったという結果が出ています」

腸を通過した「乳酸菌」が免疫を上げる!

 先ほど紹介した「免疫能に関する栄養素」の図の中で、一つだけ栄養素ではないものが入っていたことに、気がつきましたか?
 それは「乳酸菌」です。
 竹田先生は次のように解説します。
「ヨーグルトや発酵食品に含まれる乳酸菌をとることで、自然免疫であるNK細胞が活性化することがわかっています。最近、腸内の免疫について盛んに研究されているのですが、腸内細菌と腸内の免疫はいつも情報交換をしていることが明らかになっていて、乳酸菌の成分や代謝物が腸から吸収されると、腸でNK細胞が活性化して、全身の免疫が上がるのです。乳酸菌に私たちの免疫を上げてもらうには、腸を通ることが大前提。乳酸菌を顔や体に塗ってもダメなんです(笑)」(下図参照)

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 そして、竹田先生は大事なこととして付け加えました。
「免疫=健康ではありません。免疫は、あくまで健康を下支えするもの。免疫は細胞の働きの1つなので、細胞自体に元気がないと活性化しようがありません。細胞を構成するのは、食事からとるいろいろな栄養素です。やはり、バランスのよい食事が基本になります」

まとめ

・免疫は細胞の働きの1つ。基本は細胞を元気にするためのバランスのよい食事
・免疫を上げるには、①バランスのよい食事、②無理のない運動、③大笑い!
・口からとりこんだ乳酸菌が腸の免疫を刺激することで、全身の免疫が上がる!

※「健康づくり提唱のつどい」は、WHO(世界保健機関)が提唱する4月7日の「世界保健デー」に合わせて、(公社)日本栄養士会が社会活動の一環として、人々の健康の保持と増進に役立つさまざまなテーマを設定し、1980年から毎年開催しています。「栄養の日(8月4日)」の制定にともなって、2018年度から「栄養の日・栄養週間」に合わせて開催しており、今年も8月に大阪市で開催する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、オンラインでの開催としています。

「栄養の日・栄養週間 2020」スペシャルサイトを見る

「市民公開講座」を動画で見る

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