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知っておきたい低栄養のこと。高齢でも筋肉を保ち元気になれる

知っておきたい低栄養のこと。高齢でも筋肉を保ち元気になれる

赤枝 いつみ

監修
赤枝 いつみ
公衆衛生分野での職務経験豊富な管理栄養士
  • 撮影
    江森康之
  • テキスト
    タナカヒロシ
  • 撮影
    江森康之

2017年07月06日[2018年04月11日更新]

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高齢になれば、食が細くなって筋力が落ちるのは当たり前――その考えが低栄養の原因となり、何も手を打たなければ寝たきりになってしまうことも。しかし、味の素㈱で高齢者向けの「栄養ケア食品」を担当する管理栄養士の福山晶美さんは、栄養をしっかりとっていれば、高齢だからといって元気な生活を諦める必要はないといいます。低栄養の原因やからだへの影響、対策についてお話をしていただきました。

福山晶美(ふくやま てるみ)

味の素株式会社 家庭用事業部 ニュートリションケアグループ。管理栄養士。外食の営業や経管・経口の流動食等の開発を経て、現在、高齢者の健康課題の啓発・広報と製品開発を担当。

寝たきりは急には訪れない! 気づかずにいると怖い「低栄養」

----味の素㈱が取り組んでいる「高齢者の低栄養」とは、どういう問題なのでしょうか?

福山:高齢者に限らず、歳とともに体力や筋力が落ちたり、食欲がなくなったりする経験は、誰しもあると思います。ただ、それを放置すると、どんどんからだが衰えていって、歩くのも辛くなってしまう。動かないからお腹がすかなくて、ますます食べられなくなり、栄養不足が進む......。負のスパイラルに陥って、最終的には寝たきりになってしまうこともあるのです。

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味の素㈱パンフレット『筋肉をつくる本』表紙

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味の素㈱パンフレット『筋肉をつくる本』より

----些細なからだの変化を放置することで、寝たきりまで進行してしまうのですね。

福山:歳だから衰えて、食べられなくなるのは当たり前と思ってしまうのですね。「ようやく食欲が衰えてきたわ」って喜んでしまう女性もいるくらいで(笑)。高齢者であっても、1日に必要な栄養素はほとんど変わりません。もし食欲が湧かないなら、少量でも栄養がとれるものを食べれば、そこで負のスパイラルを断ち切ることができます。そのために味の素㈱では「栄養ケア食品」というシリーズを立ち上げて、サプリメントや食品を開発・販売しています。

----負のスパイラルを止めるには、どんな栄養が必要なのですか?

福山:エネルギーとたんぱく質が重要です。ただ、高齢の方に朝食の内容をお聞きすると、ごはんと味噌汁と漬物だけという方も多くいらっしゃいます。そうすると肉や魚などを食べていないために、たんぱく質不足から筋力が落ちてしまうことがあるのです。食が細い方は、肉や魚、卵、大豆製品など、たんぱく質がとれるおかず(主菜)から食べたほうがいいと思います。

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味の素㈱の管理栄養士、福山晶美さん

----おかずから食べて、お腹いっぱいになったらごはんは残してもよいのですか?

福山:先に肉や魚などを食べたほうがいいですね。たんぱく質がとれて筋力がついてくると、動き回れるようになりますので、食欲も戻り、ごはんや野菜もしっかり食べられるようになると思います。

何歳からでも筋肉は蘇る!? 歳をとったからと諦める必要はない

----低栄養の原因は、歳をとって食が細くなることが大きいのですか?

福山:そうですね。また、料理をすることに疲れて、1回の食事がうどんだけなど、栄養不足に陥りがちなパターンも多くみられます。うどんをつくるときに、卵を1つ落とす、インスタントラーメンでしたら、牛乳を入れてミルクラーメンにするとたんぱく質が無理なくとれます。それにカット野菜を加えれば、簡単に栄養バランスはとれるのです。完璧な食事を毎食続けなくても、1週間で帳尻を合わせるようにするなど、楽な気持ちで続けることが重要だと思います。

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味の素㈱が発行するレシピ集『気軽にらく楽レシピ』

----暮らしのなかで低栄養に気づくポイントはありますか?

福山:階段の昇り降りがおっくうになったとか、立ち上がるのが辛いとか、いままでの生活動作に対する感覚が変わってきたら、ひとつのサインだと思います。あと、歩く速度には如実に現れますね。ある程度の食事と運動が維持できていれば、そんなに筋力は衰えません。

----歳とともに筋力が衰えるのは、普通のことではないのですか?

福山:若い人でも風邪で何日か寝込むと、起き上がって歩き出すのも大変ですよね。それくらい筋肉はすぐ弱ってしまうものなのです。高齢の人は仕方ないと思いがちですけど、そんなことはなくて。筋肉って、1、2カ月で再生できるものなのですよ。

筋肉や関節、骨など、運動器の衰えが原因で、歩行などの日常生活に支障をきたす状態をロコモティブシンドロームというのですが、骨の半分が生まれ変わるには7年、関節の半分が生まれ変わるのには117年もかかる。つまり、食べて動いて、筋肉づくりを心がけることが元気になる早道なのです。

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味の素㈱パンフレット『筋肉をつくる本』より(注1)

----何歳からでも筋肉は蘇ると知れば、希望が湧きますね。

福山:筋肉がついていれば、よろけて転ぶリスクも減りますし、筋肉は水分を貯めるタンクにもなるので、脱水症状を防ぐことにもつながる。糖尿病になりにくいことも研究でわかっています。

----高齢者が筋肉をつけるために大切なことはなんでしょうか?

福山:若いころに比べると筋肉をつくる力が落ちているので、しっかりたんぱく質をとる必要があります。それから運動ですね。なかなか運動できる環境にない方も多いと思いますが、電車では座らずに立つとか、エスカレーターではなく階段を使うとか、小さなことでもやったほうがいい。ゆっくり歩くのと早足で歩くのを交互に繰り返すだけでも、かなり効果があるんですよ。

注1:筋肉のたんぱく質半減期 Volpi, E. et al.: Basal muscle amino acid kinetics and protein synthesis in healthy young and older men. JAMA, 286(10): 1206‒1212. 2001、骨のコラーゲン半減期 Manolagas, S. C. : Birth and death of bone cells: basic regulatory mechanisms and implications for the pathogenesis and treatment of osteoporosis. Endocrine Reviews, 21(2): 115‒137. 2000、関節(軟骨)のコラーゲン半減期 Verzijl,N.,et al .:Effect of collagen turnover on the accumulation of advanced glycation end products. The Journal of biological chemistry, 275:39027-31, 2000)

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栄養とおいしさ、どちらもかなえる「栄養ケア食品」づくりの難しさとは?

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