両親にはいつまでも元気でいてほしいものですが、体力同様に、食べる力にも「老化現象」があります。
食事中に咳き込みやすかったり、やせてきたりしたりしていたら、食べる力が低下していないかどうか、一緒にチェックしてあげましょう。
目には見えないが、胃や腸も老化していく
人生も折り返し地点を過ぎると、体力がなくなってきたと感じたり、疲れやすかったりしますよね。加齢によって、「食」に関連するさまざまな機能も低下してきます。
たとえば、舌にあって、味を感じる味蕾(みらい)という細胞が少なくなると味覚が衰えてきます。高齢になると濃い味つけを好むようになるのは味覚が鈍感になっているためです。
だ液の分泌量が低下したり、のどの渇きを感じにくくなったりもします。また、食べ物を噛む筋力も弱くなり、噛んだものをごくんと飲み込む筋力も弱ってきます。
若いころに比べると、その筋力は3分の1から4分の1ほど低下するといわれています。
飲み込んだ食べ物を、胃や腸で消化・吸収する力も弱まってきます。 食後に疲れやすかったり、胸やけや胃もたれを起こしやすくなったりするのはそのためです。
若いときとは同じではないことを自覚しよう
さらには、食べたものを排泄する力も弱まります。 腸の蠕動(ぜんどう)運動が弱まるので、便秘になりやすくなります。
食事のときの姿勢を保つにも筋力が必要ですから、食べる姿勢にも影響が出てきます。
若いときは体力があって1食抜いたくらいならなんともなかった人でも、年齢を重ねていくとそんな無茶はできなくなります。
毎日3食しっかり食事をして、良質のたんぱく質をとり、野菜やいも類、海藻、乳製品、果物など、さまざまな食材から栄養素を体にとり入れることが、ますます大切になります。
食べる力の機能も衰えていくことを知って、料理の中身や食事の仕方を、若いときとは変えていくことが必要になるのです。
噛む力、飲み込むが低下しているサイン
周囲にいる高齢者で、噛む力や飲み込む力が心配な人がいたら、下記の10項目に該当していないかどうかをチェックしてみましょう。
- 食事中にむせている
- 食べ物が噛みにくそう
- 痰が出やすい
- 食事中や食後に咳が出る
- 口の中やのどに食べ物や飲み物が残りやすい
- 食べ物の嗜好が変わった
- 食事の時間が長くなった
- やせてきた、体重が減ってきた
- 食事をすると疲れやすそう
- 微熱が出やすい、または肺炎になったことがある
食べ物にかぎらず、飲み物を口に入れたときに咳き込んでいるような場合も、飲み込む力が低下しているサインです。
噛みやすい、飲み込みやすい料理で低栄養を予防
上記のように噛む力や飲み込む力が弱ってくると、食べられる量が自然と減っていき、健康な体を維持していくために必要な栄養素が体内で足りなくなってきます。
この状態を「低栄養(状態)」と呼び、筋肉や骨の量を含めた体重が減るだけでなく、体力や免疫力も低下していき、要介護状態につながりやすいため、注意が必要です。
噛む力や飲み込む力に低下がみられたときには、その力に合わせて料理のやわらかさや、飲み込みやすさを変えていく必要があります。
年齢を重ねても1日3食、食べやすい料理からエネルギーと栄養素をしっかりとることが、何より大切なのです。
まとめ
まずは老化によって食べる力や消化・吸収する力も衰えていくことを、ご本人だけでなくそのご家族も知っておくことが大切です。
そして、そのサインを見逃さないように注意して、低栄養状態に陥らないように食事の工夫をしていけるといいですね。
|