いま、エネルギー不足の状態に陥る人が増えています。若い女性から高齢者まで広がるこの「低栄養」の問題について、味の素株式会社でアスリートの栄養サポートを行う管理栄養士の鈴木晴香さんにうかがいました。フィギュアスケートの宮原知子選手とのエピソードとともにお届けします。
管理栄養士 鈴木晴香 さん 味の素株式会社 オリンピック・パラリンピック推進室 |
【動画でチェック】毎日バランスよく食べるポイントは?誰でもとり入れられる簡単な方法をご紹介します。
体重だけに意識を向けないで
宮原さんはもともと食事の量が少なく、補食(不足する栄養素を補うために摂取する食事)もほとんど摂りません。お話をうかがっていくと「体が重いとジャンプが高く飛べない」という意識が強くあり、食べることに抵抗があることがわかりました。 ただ、当時の食事ではアスリートとしてエネルギーや栄養素が不足している状態。同じころに左股関節の疲労骨折が発覚し、食事量の見直しはもちろん、体重を増やしていくための意識改革が必要と実感しました。
まず取り組んだことは、「体重が増えるとスケートの調子が悪くなる」という意識を改革すること。3食しっかり食べ、補食も活用して食事量を増やすようにお伝えしました。さらに、毎朝体重と体脂肪率を測定し、その日の練習量やスケートの調子、体調などを記録してもらいました。
体重と体脂肪率がわかると、除脂肪量(体脂肪を除いた骨量、筋肉量の指標となる)を割り出すことができます。すると体重だけを見るのではなく、アスリートに欠かせない筋肉の量を意識できるようになるのです。
筋肉が増えればもちろん体重は増えますが、よりパフォーマンスが上がり、ジャンプが飛べるようになることを宮原さんに体感してもらうことができました。 ある日、体重が減ったときのメモに、「大変!」と書かれていたのを見たときは、意識が変わったことを感じました。結果として体重は増え、疲労骨折から復活してオリンピックで自己ベストを更新できたことは、うれしかったですね。
『勝ち飯®』でバランスよく、そしておいしく
アスリートのみなさんには主食、主菜、副菜、汁物、牛乳・乳製品の"5つの輪"と捕食をそろえ、質も量もしっかり食べることを軸に栄養支援を行っています。
この5つの輪は、一般の人のカラダ作りにも言えること。仕事や勉強、部活などで実力を発揮してもらえるよう、『勝ち飯®』では目標に近づくために必要な栄養素を含む食材や献立の提案をしています。
栄養素を無理なくおいしく摂れる汁物
バランスのよい食事を継続するには手軽さも重要です。
5つの輪の汁物は、具を豊富に盛り込むことでたんぱく質や野菜の栄養をプラスできるのでとても便利です。5つをそろえるのが難しい人は、この「具だくさんの汁物」に「肉や魚などのたんぱく質源」、「野菜」の3つと主食をそろえるだけでも大丈夫です。手軽に『勝ち飯®』を実践することができますよ。 もうひとつ大切なのは、おいしくたのしく食べること。栄養面をストイックに追求するのではなく、食事のたのしさや人と食事をする幸せを感じながら毎日の食事に向き合ってみてください。
具だくさんで栄養満点!レシピ
具だくさんで栄養満点!糖質源となるじゃがいもを多めにし、かつ食べやすく小さめにカットした、試合前のエネルギー補給にピッタリな汁物。平昌オリンピックでもアスリートから好評を得たレシピです。
材料(4人分) ・豚もも薄切り肉:150g(2cm幅に切る) ・じゃがいも:3個(ひと口大に切る) ・にんじん:1/3本(ひと口大に切る) ・こんにゃく:1/3枚(1.5cm角) ・油揚げ:1枚(タテ半分・1cm幅) ・長ねぎ:1/3枚(小口切り) ・しょうが(すりおろし):1カケ分
■A ・水:3・1/2カップ ・ほんだし®:小さじ山盛り1 ・みそ:大さじ3 ・サラダ油:大さじ1/2
作り方 1.鍋に油、しょうがを入れて熱し、香りが出てきたら、豚肉を加えて炒める。肉に火が通ったら、じゃがいも・にんじんを加えてサッと炒め、A、こんにゃく・油揚げを加え、アクを取りながら煮る。 2.全体に火が通ったら、火を止め、みそを溶き入れ、ねぎを加えて再び火にかけ、沸騰直前で火を止める。
※「勝ち飯®」は味の素(株)の登録商標です。
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