特集
超高齢社会の日本を救え。新しい介護食品「スマイルケア食」とは
- PR
- 高齢期
- 監修
- 赤枝 いつみ
- 撮影
- 江森康之
- テキスト
- タナカヒロシ
- 撮影
- 江森康之
2017年07月06日[2018年04月11日更新]
「おいしいもの」を「好きなだけ」食べることが当たり前ではない生活を想像したことがありますか? 超高齢化社会の到来とともに、現実的に迫っている介護食品の問題。いままさに、行政や食品メーカーでは試行錯誤が繰り広げられています。そこで、農林水産省の「スマイルケア食」の普及対策事業を実施する、公益財団法人食品流通構造改善促進機構の織田哲雄専務理事に、介護をめぐる食の現状をお聞きしました。
介護する人の高齢化、独居の高齢者......介護をとりまく「食」の現状と課題----介護の現場における食の現状は、どのようなものでしょうか? 織田:最近は介護する方も高齢者であるケースが増えており、食事の用意に苦労されている方も多いようです。管理栄養士や医師の指導を受けても、うまく日々の食事に落とし込むことが難しいという悩みや、しっかりお世話したい気持ちはあるのに、試行錯誤の末に結局は自己流になってしまうという問題も多く聞きます。 それでも介護してくれる人がいればまだいいほうですが、食生活を自己管理しなければならない独居の方も増えていて、より深刻な状況です。 ----そんななかで、どういった介護食品が求められていると感じていますか? 織田:やはり、おいしいものですね。ただ栄養がとれるという以上に「食べる楽しさ」が味わえるもの。実際に食品メーカーさんが工夫を凝らして、おいしさを重視した商品開発が進んでいると感じます。 私も試食させていただく機会があるのですが、最近の介護食品の味はかなりクオリティーが高いです。噛むことや飲み込むことに問題がある人向けの食品は、通常の食事よりずっとやわらかいのですが、風味はしっかり楽しめるものになっています。 ----いまの介護食品の課題はなんでしょうか? 織田:価格だと思います。商品1つあたり150〜200円前後で、「意外と安い」という印象を持ってしまいがちなのですが、たとえばおかゆに主菜1品、副菜2品をつけるとなったら、合計700〜800円になってしまう。それを3食365日となると、かなり負担が大きいですよね。 新しい介護食品の枠組み「スマイルケア食」とは?----そのなかで、農林水産省が推進している「スマイルケア食」とは、どういったものなのでしょうか。 織田:高齢化社会が進むなかで、噛んだり飲み込んだりすることが難しくなる、栄養が不足しがちになるなど、さまざまな「食」の課題が顕在化していました。そんな課題に対応した食品を選べるよう、介護食品の種類がどんどん増えていたんですね。 また、在宅や施設で介護に関わる専門家、民間の団体の方々などによって、介護食品を適切に選択できるよう、それぞれの立場からいろんな規格がつくられていました。介護をする人や必要としている人は、数ある規格の介護食品のなかから選択するのですが、たとえば自宅と施設の行き来があるなかで、相互で使っている食品規格がうまくつながっていないなどの課題がありました。各規格を並べてみるとさまざまなクラス分けがあるため、購入する方が混乱してしまうことがあったのです。 そこで、既存の規格、制度を利用していた多様なステークホルダーが、それぞれ歩み寄って共通して利用できる仕組みを構築したのがスマイルケア食です。 ----複数の分類法があったのでは、結局自分に必要なものがどれなのかわかりにくいですね。 織田:そうなんです。そこでさまざまなステークホルダーの方にお集まりいただいて、それぞれの分類を統一し、区分分けしたというわけです。 ----現在は、介護食品の分類法はスマイルケア食の分類に一本化されたということでしょうか? 織田:スマイルケア食は既存の規格を一本化するものではなく、統一化したものです。今後も既存の規格と混在しますが、もっと認知度を高め、いずれは栄養指導をする人もされる人も、スマイルケアのマークを基準に個々人に合った商品を選べるようになることが理想です。 |