人に邪魔されない、同じものを食べても飽きない朝食。ぜひルール化を----読者が生活のなかで応用できるヒントもお伺いできればと思うのですが、栄養学を学んだうえで、普段の生活で気をつけていることはありますか? 水野:食物繊維をとるために、海藻類は1日のどこかで食べるようにしています。食べることも大事だけど、出すのも大事なので。あと、仕事が不規則だからこそ、朝食を必ずとるようにしていますね。 鈴木:朝食は午前中を頑張るためのエネルギーって世間では受け取られているけれど、それだけではなくもっと大きな意味があって。 水野:ざっくりと言うと、1日のリズムを整えるスイッチの一つですよね。朝ごはんを食べたからといって魔法のように体調が変わるわけではないけど、食べ物が消化・吸収されることでからだのリズムが整うと考えられています。もちろん食だけでなく、睡眠なども関係してきますが。 鈴木:そう。朝にお日様の光を浴びるのもスイッチの一つだけど、そのスイッチが乱れるとからだは困惑するから、心身ともに不調を兆しやすくなるんだよね。だから、朝ごはんを食べていない人は人生を損していますよ。そういえば、朝食で何か必ず食べているものはある? 水野:卵と乳製品は必ず食べていますね。 鈴木:私も乳製品は必ず食べています。朝ごはんって昼や夜と違って誰にも邪魔されないし、毎日同じでも飽きないからルール化しやすいんですよ。朝食の習慣がない人は、1日1個のヨーグルトだけでもとるようにルール化してみてほしいですね。 ファーストフード、スナック菓子、ラーメン、お酒とのつき合い方を考えよう----スナック菓子やラーメン、ファーストフードなど、からだに悪そうだけどつい食べちゃうものってあるじゃないですか? お二人は食べられますか? 水野:適度には食べますよ。だけど、やっぱりそれだけで生活するとなると、栄養バランスが崩れてきますよね。私、すごくストイックな食事をしていると思われがちだけど、全然そんなことはないんですよ。 1日で栄養バランスが取れないなら、2日、3日で取ればいいし、あるいは1週間で取ればいい。もっと緩やかに考えるなら、1か月でもいいと思うんです。そのときの体調もあるので、無理してガチガチに決めなくてもいいんじゃないかな。プロアスリートなら必要かもしれませんが。 ----長いスパンで栄養をマネジメントできればいいということですね。 水野:あ、でもちゃんと栄養学を学ぶようになって、1つだけぱったりやめたことがあります。スナック菓子の袋を抱えて、甘い炭酸飲料水でバクバク流し込むのはなくなった(笑)。あれ、エネルギーに換算したらとんでもない化け物みたいな数値が出ますよね? 鈴木:私も甘い炭酸飲料水は憧れだわー(遠い目)。でも歳をとってからそんなことしたらリスクが高くて。水野さんも昔はよく飲んでたよね? 水野:歳を重ねて、運動量が減ったんですよね。怖いのは、アスリートも普通の人も、歳とともに運動量は絶対少なくなるんですよ。なのに、食生活ってあんまり変わらない。だから、そこは意識して変えなきゃいけないところかもしれません。いまは甘い炭酸飲料でもあえて小瓶のものを選んでいます。 ----お酒についてはどうですか? 水野:私も志保子先生もお酒は飲みますが、スポーツ栄養学で考えると、基本的にアルコールは必要ないものですよね? 鈴木:そう。だって肝臓が疲れるんだもん。アルコールには肝臓を酷使するイメージがあると思うけど、運動をするときも肝臓をかなり使っているんですよ。いまの選手たちはそれをわかっているから、普段はほとんどお酒を飲まないよね。特に大事な試合の前後に飲む人はいない。 水野:いま、市民ランナーの方が増えていますよね。マラソン大会を控えた前日に飲む人はさすがにいないと思うけど、「いいタイム出たー! 打ち上げで飲むぞー!」というのも、できればその日じゃなくて、からだが回復してからのほうが肝臓にいいそうですよ。その日のほうが美味しいとは思いますけどね(笑)。 鈴木:まあ、趣味でやっている人は仕方ないけどね。でもマラソンの後って免疫力がかなり落ちているから、無理をすると風邪をひく確率がぐんと高くなりますよ! 『東京オリンピック・パラリンピック』でも、スポーツ栄養士が大活躍----さて、そろそろ最後ですが、今後、お二人がやっていきたいこと、ビジョンを教えてもらってもいいですか? 鈴木:とりあえず早く管理栄養士になってよ。お願いだから! 水野:はい!(笑)。私は先ほども言いましたけど、まずは管理栄養士になって、その先、アスリートに向けたスポーツ栄養学はもちろん、この考え方を一般の人、特にこれからからだをつくっていく子どもや、同年代の女性にもわかりやすく伝えていく仕事をしたいと思っています。栄養学ってなかなか伝わりづらいんで、試行錯誤しているところですが。 ----鈴木先生はいかがですか? 鈴木:2020年に『東京オリンピック・パラリンピック』(以下『オリパラ』)があります。スポーツ栄養士として『オリパラ』を日本国民だけではなく、世界中から来てくれる選手や観客に楽しんでもらえる仕掛けを組織委員会さんと一緒にやりたいなぁと考えているところです。 あと、世界各国の選手が事前合宿に利用するホストタウンが日本各地にできるんですけど、母国の食事ができないとストレスがたまるでしょう? その土地の美味しいものを食べてもらいたい気持ちもあるけど、毎朝、オートミールを食べる国の人だったら、美味しいオートミールを出してあげないといけないですよね。 水野:日本人選手も海外に行くときに、レトルトご飯を持っていたりしますもんね。 鈴木:選手村やホストタウンの「食」に関する会議が3月からスタートしていて、ハラール(イスラム文化圏で食べることが許されている食材や料理)など、各国の食文化を学んでいます。グルテン(小麦や大麦などの穀物に含まれるたんぱく質)アレルギーを持つ選手がどのくらいいて、どういうものを食べたいかなど、いろいろ調べてやっていけたらなと。 ホストタウンも選手村も、『オリパラ』に関わる食事すべてを日本栄養士会や都道府県の栄養士会と連携していろいろやりたいんですよ。だから早く管理栄養士になってね。2020年まであっという間だから。 水野:来年、絶対取らないとダメだな......。 |