食物アレルギーのホントとウソを斬る----結局のところ、ある食物ばかりを食べたり、避けたりするのではなく、栄養バランスの良い食生活が大事ということですよね。食物アレルギーに関しても、食べ過ぎて一定量を超えると発症しやすいといった話も聞きます。 安達:食物アレルギーに関しては、年々新しい研究成果が発表されているのですが、いまのところ食べた量との関係性ははっきりとはわかっていません。 門口:妊娠中にママがアレルギー原因になりやすい食品を食べなければ、子どもがアレルギーになりにくいといった情報もありますが、科学的な根拠はありません。極端な食事制限は母体や胎児の発育にも影響を及ぼす可能性があるので、お母さんもバランスよく食事をとることが大切です。もし万が一、子どもにアレルギー反応が出た場合は、かかりつけの医師に相談していただき、自己判断でむやみに食物除去しないでほしいです。 井上:アレルギーがあるお子さんは、医師と相談しながら少しずつ食べる量を増やして、食べられる適量を確認していく食物経口負荷試験を行う場合があります。離乳食の基本的な進め方も同じです。新しい食品をはじめるときは1さじずつ与え、様子を見ながら量を増やしていきます。 目安として、アレルギーの心配の少ないお粥からはじめて、野菜、豆腐、魚、肉と順に確認しながら種類を増やしていくんです。 ただ、アレルギー体質は遺伝するという説もあるので、ご家族に強いアレルギー病歴があるなど、心配な場合は医師と相談してから離乳食をはじめるようにお話しします。お子さんの体調と機嫌が良いタイミングで、何かあった場合でも病院に行ける時間帯に新しい食材を食べさせてみてください。 「離乳食は遅いほうがアレルギーになりにくい」は、本当なのか?----栄養やアレルギーについて、最近わかった新しい情報はありますか? 井上:2016年12月に発表された、国立成育医療研究センターの研究で、生後6か月より固ゆで卵を与えたグループは、与えなかったグループに比べ、1歳時の鶏卵アレルギーの発症率(%)が約8割減少したという報告があります。 門口:ただ、「離乳食は早くはじめたほうがいい」というところを極端にとらえて、離乳食のスタートや、卵を食べさせる時期を早めたりするのはおすすめしません。私たち管理栄養士もその報告を見ましたが、アレルギー対策は専門医の指導のもとで進めるものであるので。 安達:5、6か月ころにお粥からはじめて、野菜や豆腐、魚、肉などの食品を食べさせた7、8か月ごろに、固くゆでた卵の黄身からあげたほうがいいという離乳食の流れは、これまでと変わらないですから。 また、離乳食の開始を遅らせても、アレルギー発症の予防にはなりません。赤ちゃんのお口の発達を見ながら、適切な時期に離乳食をスタートするのがいいですね。 メディアの情報どおりに子どもが成長していなくても、落ち着いて見守ろう----そのほか、離乳食に関してのアドバイスはございますか? 門口:離乳食は、お子さんの発達に合わせて進めていくことが大事です。「ごっくん」の練習からはじめて、1日2回食になったら、魚や豆腐などのたんぱく質の食品をとりいれて栄養バランスを考えていきます。離乳食をすべて手づくりするのが大変なときやお出かけのときなどには、市販のベビーフードを上手に利用するのもひとつの方法ですね。 安達:ベビーフードを使うときは子どもの月齢に合ったものを選んであげましょう。ほかにも、カレーや肉じゃがをつくるときに油で炒めずに野菜を水から煮て潰してあげるなど、簡単な方法もあります。家族で鍋をするときに、野菜をとりわけるのも良いですね。手作りのものを味わう経験もさせてあげましょう。 これまであまり料理をされなかった方も、妊娠をきっかけに味噌汁だけでもいいのでつくってみてほしいです。また、千代田保健所の講習会では和食文化についてのお話や食事のいろどりについても触れています。バランスの良い食事はいろどりもきれいで食欲もわくので、楽しく食べられると思います。 井上:あと、身長、体重などの発育については、母子健康手帳にもある「発育曲線」のグラフと照らし合わせて確認していただければと思います。発育曲線のカーブに沿っていて、そのお子さんなりのペースで成長していることを確認しましょう。 育児本の情報どおりに進まないと心配になるかもしれませんが、氾濫する情報に惑わされずに落ち着いて見守ってあげてほしいですね。 門口:身近に相談する方がいない場合は、保健所などの公共機関に相談するのも良いです。最初のお子さんの場合は戸惑うことも多いと思いますが、妊娠・出産をきっかけにご自身やご家族の食生活を振り返っていただければと。そこに私たち管理栄養士が少しでも関われたらいいなと思っています。 |