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栄養の知識

集中力、学力低下が危険なサイン。思春期と貧血の思わぬ関係

集中力、学力低下が危険なサイン。思春期と貧血の思わぬ関係

三好 美紀

監修
三好 美紀
専門は国際栄養学、公衆栄養学。食育研究にも関わってきました。
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    ニュータス編集部

2018年01月09日[2018年04月11日更新]

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思春期は子どもたちにとって、あらゆる面で変化の多い時期。栄養面では、からだが急激に成長することによる鉄分不足で、貧血を発症する子どもが多いといわれています。しかし、体調不良やただの疲れだと勘違いして、症状に気づかないことも多いのがこの病気の特徴。そんな貧血の主な原因と症状を知り、まずは予防における正しい知識を身につけておきましょう。

症状がわかりづらい、思春期の貧血に注意!

貧血とは、血液中に含まれる血色素(ヘモグロビン)量が減少した状態をいいます。血液中の赤血球は、全身の細胞に酸素を送り届ける役割を果たしているのですが、そのために必要不可欠となるのがヘモグロビンです。特に、貧血のなかでもっとも多い鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビンの減少が関わっています。ヘモグロビンは鉄を原料としており、鉄分が不足することで「だるさ」や「頭痛」などの症状が現れます。

一般成人に比べ、思春期の子どもは非常に多くの鉄分を必要とします。厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、1日あたりの推奨量は、成人の男性が7~7.5mg、女性が6~10.5mgであるのに対し、思春期の男性では9.5~11.5mg、女性は7~14mgと、成人の1.5〜2倍程度に増えていることがわかります。

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さらにこの状態に、スポーツやダイエット、月経、ストレスなどが重なると、からだがより多くの栄養素を必要とする状態になり、鉄分不足がより深刻化していく......という悪循環につながっていきます。

思春期の貧血の原因は、ほとんどが鉄分不足による「鉄欠乏症の貧血」ですが、まれに、ほかの原因で引き起こされることもあるので、注意が必要です。たとえば、骨髄中の造血幹細胞が減少することが原因で起こる「再生不良性貧血」や、血管を流れる赤血球が破壊されることによって引き起こされる「溶血性貧血」など、さまざまな病気が隠れている場合もあるので、疑わしい症状を感じたら、速やかに医師の診察を受診することが大切です。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の概要(厚生労働省)

集中力や学力低下と、貧血の思わぬ関係性

貧血の症状には、頭痛、疲れやすい、顔色が悪い、息切れ、動悸がする、月経異常などがあります。しかし、疲れやストレスの症状にも似ているため、子どもたちにとって自覚しにくく、大人たちも気づいてあげることが難しい症状とも言えるでしょう。

しかし、貧血の症状にはひとつの特徴があると言われています。それは、集中力と理解力の低下、その影響による学力の低下です。

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貧血と学力の関係性を裏づける資料に、広島県立安芸高等学校の生徒を調査した報告書があります。これによると、集中力の欠如や体調不良などの症状によって、貧血が子どもたちの学習意欲の低下を引き起こしていることが指摘されています。血中ヘモグロビン値と学力偏差値の比較図では、血中ヘモグロビン値が高い学校ほど、偏差値が高い傾向にある調査結果も示されています。鉄分は勉強に励む思春期の子どもたちにとっても、必要不可欠な成分であるといっても過言ではありません。

健康教育と体育授業から『学力向上』を目指す取り組み(広島県立安芸高等学校)

貧血を予防するための栄養のポイントは?

貧血は、血液検査で診断できるので、疑わしい症状を感じたら、まずは医療機関に診てもらうことが大切です。

貧血予防につながる栄養素は、もちろん鉄分です。鉄には、おもに肉や魚などの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」、そして植物性食品や卵、乳製品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。

「ヘム鉄」は吸収率が高いので、そのまま摂取すれば効率的に吸収することが可能です。一方、「非ヘム鉄」は吸収率が低いのですが、たんぱく質やビタミンCと組み合わせることで吸収力がアップし、より多くの鉄分摂取が可能になります。

そのため「ヘム鉄」だけにこだわらず、「非ヘム鉄」を毎日の食事にうまく取り入れるとが、鉄分不足には効果的です。たとえば卵と豚肉を一緒に炒める、ヨーグルトにはフルーツを加えるなどの工夫をしてみてください。また、造血効果のあるビタミンB12、ビタミンB6、葉酸なども貧血予防につながります。一方で、鉄分の吸収を阻害するカフェイン(例:コーヒー)やタンニン(例:コーヒー、紅茶、緑茶)のとりすぎにも注意しましょう。

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ほかにも、四季に応じた旬な食材を摂取して、貧血を予防できるようなバランスの良い食事を心がけましょう。たとえば、春はカツオ(ヘム鉄、たんぱく質、ビタミンB12、ビタミンB6)や菜の花(非ヘム鉄、ビタミンC、ビタミンB6、葉酸)、夏はほうれん草(非ヘム鉄、葉酸)やゴーヤ(ビタミンC、葉酸)、秋はイワシ(ヘム鉄、たんぱく質、ビタミンB12、ビタミンB6)やサツマイモ(ビタミンC、ビタミンB6、葉酸)、冬はカキ(非ヘム鉄、ビタミンB12、葉酸)やミカン(ビタミンC、葉酸)など、それぞれの季節において、バラエティーに富んだ食材で貧血を予防する食事が可能です。

年間を通して摂取できる食材としては、卵、牛乳、バナナなどがありますので、毎日の食卓のなかで手軽にとり入れられます。たとえば、卵なら定番の卵焼きや目玉焼きに加えて、夏の食材でもあるほうれん草を加えた卵炒めや、ゴーヤチャンプルーなどもいいですね。このように、さまざまなアレンジが効くので、工夫しながら貧血予防につながる食事を楽しんでみてはいかがでしょうか?

貧血の基礎知識と予防に効く食事(女子栄養大学)

貧血予防に効く栄養素と食材(女子栄養大学)

まとめ

からだの急激な成長に伴い、鉄分が不足しがちになる思春期。貧血は自覚しにくい症状が多いので、そのサインを見逃さないことが大切です。体調不良だけでなく、最近集中できない、学校の成績が低下の傾向にあるという場合は、鉄分をはじめとした栄養不足であることを疑い、食生活の改善を図るように心がけましょう。

思春期の貧血予防には、次の3つのポイントを守ることが大切です。

1. 無理なダイエットをしない
2. 好き嫌いをなくす
3. 3食しっかり食べる

とにかく栄養素が不足しがちな思春期は、健康的な食生活が何よりも大切です。無理なダイエットが禁物なのはもちろん、好き嫌いをなくし、何でも食べることも重要なポイントです。そして、食事を抜いたりせず、3食きちんと食べること。寝坊しがちな朝は、朝食をとらずに登校してしまうと、授業にも集中できなくなります。朝ご飯をしっかり食べて勉強やスポーツに励みましょう!

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