見た目も華やかで栄養バランスのとれたレシピをSNSやブログで紹介し、Instagramフォロワー数3万人を超える人気を誇る菱沼未央さん。現在は、フリーランスの管理栄養士として、さまざまな媒体でのレシピ作成やフードコーディネート、食にまつわるコラムの執筆、食器の企画など、幅広いジャンルで活躍されています。NU+では、そんな菱沼未央さんの見ても食べてもおいしいレシピを連載形式でお届けします。
今回は、今年社会人になった弟さんの健康を考えてつくられたお弁当レシピを教えてもらいました!
定番の献立に一工夫。隣の席の上司との会話も花咲くお弁当
新年度がスタートし、あっという間にもう5月。ゴールデンウィーク明け、なんだか仕事に精が出ない......という方も多いのではないでしょうか。
今年から社会人となった私の弟も、ご多分に漏れずお疲れモード。慣れない職場、コンビニ弁当、夜遅くの食事、飲み会......もともと瘦せ型の弟がさらに薄いからだになった気がして、ふと弟に栄養たっぷりのお弁当をつくってあげようと思いました。
そんなわけで、今回のテーマは「新社会人の弟に送る、たんぱく質たっぷり! 脱5月病弁当」です。ふたを開けたときに思わず笑みがこぼれ、隣の席の上司との会話の種になるようなお弁当を目指しました。食べ終えたときに、心地よい満腹感が得られるところもポイントです。
定番の献立に一工夫加えただけの簡単なお弁当です。肩の力を抜いて、楽しんでつくってみてくださいね。
材料(1人分)
- やきとり
・鶏むね肉:1/2枚(100g) ・塩こうじ:小さじ1(5g) ・サラダ油:小さじ1(4g)
【A】 ・ しょうゆ:小さじ1(6g) ・ みりん:大さじ1/2(9g)
- だし巻き卵
・卵(M):1個 ・サラダ油:小さじ1(4g)
【B】 ・ めんつゆ(3倍濃縮):小さじ1(5g) ・ 水:大さじ1/2(7.5g) ・ 砂糖:小さじ1/2(3g)
- つけ合わせ
・なばな(のらぼうな)の塩ゆで:30g ・ミニトマト:1個(10g) ・しょうがの甘酢漬け:10g
つくり方
- やきとり
1. 鶏むね肉は一口大(1/2枚を8切れに)に切り、塩こうじをもみこんでおく。【A】はあわせておく。
2. 1を4切れずつ串に刺し、油をしいたフライパンに皮目を下にして並べ、中火にかける。
3. 皮目に焦げ目がつき脂が出たら、キッチンペーパーで脂をふきとり裏返す。ふたをして弱火で3分ほど焼く。
4. ふたを外し【A】を加え中火にし、串をころころ転がしながら照りが出るまで加熱する。
- だし巻き卵
1. ボウルに卵を割りほぐし、【B】を加え泡立てないように混ぜる。
2. 玉子焼き用のフライパンを中火で熱し油をしき、1を3回に分けて入れ、巻いていく。
3. キッチンペーパーの上に取り出し、巻いて形を整える。粗熱が取れたらカットする。
お弁当につめるときの手順のコツ
1. やきとりを焼く
2. ごはんをお弁当箱に詰め、粗熱をとる
3. のりをあぶり、ごはんに乗せる
4. 卵を焼いて粗熱をとる
5. やきとりにたれを絡める
6. ごはんの上にやきとりを乗せる
7. だし巻き卵をカットして乗せる
8. なばな(のらぼうな)の塩ゆでを乗せる
9. しょうがの甘酢漬けを乗せる
10. ミニトマトを乗せて完成!
すき間にものを詰めるときは、お箸を使うと便利です。
ポイント
- ごはん300gを詰めたお弁当で910kcal。食塩相当量2gで、エネルギー産生栄養素バランスは、たんぱく質が16%、脂質が26%、炭水化物が54%です。
※ エネルギー産生栄養素バランスとは? たんぱく質、脂質、炭水化物(アルコールを含む)とそれらの構成成分が総エネルギー摂取量に締めるべき割合のこと。たんぱく質は13〜20%、脂質は20〜30%、炭水化物は50〜65%のバランスがふさわしい。(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」)
- たんぱく質は運動をせずとも常に分解と合成を繰り返しているため、デスクワークでも油断大敵! 不足すると体力や思考力、集中力の低下などが起き、仕事にも支障をきたします。
- 弟は夜遅い時間になるとたんぱく質を含む食材をあまり食べたがらないので、残業が多いときにはお昼ごはんでしっかり補給! 18~29歳男性のたんぱく質推奨量は1日に60gですが、このお弁当で半量以上が摂れます。どちらかというと菜食な弟でも、胃に負担をかけず効率よくたんぱく質を摂取できるよう、「アミノ酸スコア」が100の卵と鶏肉を使用しました。
※ アミノ酸スコアとは? 体内で合成することができない必須アミノ酸が、人間の身体にとって望ましい量に対してどれくらいの割合で含まれているかを示す指標。この値が高いほど、良質なたんぱく質とされる。(厚生労働省 e-ヘルスネット)
- 鶏むね肉に豊富に含まれるイミダゾールペプチドは抗酸化作用を期待できます。また、神経伝達物質の原料となるフェニルアラニンも豊富なので、ストレス軽減も望めます。前日の夜に鶏むね肉に塩こうじをもみこみ串に刺しておくと朝の準備が楽に! 下味もしっかり入り、パサつきがちなむね肉もやわらかく焼けます。
- 普通の卵焼きがあまり好きではない弟に、めんつゆを使用したおかずになるだし巻き卵を添えました。卵はアミノ酸スコアが100なことに加え、レシチン、ビタミンA、ビタミンB群も豊富です。脳や神経組織の構成に使われるレシチンは思考力・集中力の低下の予防にも効果あり。おいしく食べて午後の仕事も快適に!
- つけ合わせ野菜は少量ですが、栄養バランスを考えて入れましょう。ミニトマトの栄養価は大玉のトマトに近いですが、β⁻カロテンやビタミンCの含有量は約2倍、リコピンは約2.5倍。クエン酸も豊富に含んでいるため1粒でも疲労回復に効果あり。ミニトマトに含まれるクエン酸やリンゴ酸、コハク酸は胃もたれの解消や二日酔いにも有効とされるため、歓迎会やイベントなど、お酒を飲む機会の多い新社会人にはぴったりの野菜かもしれません。
- なばなはカロテン、ビタミンC、B1、B2、葉酸、カルシウム、鉄などのミネラル類を豊富に含み、とくにビタミンCの含有量は野菜のなかでもトップクラス。ビタミンCは体の抵抗力を高め、風邪などを予防するほか、貧血の予防にも役立つので「なんとなくだるい......やる気がしない......」という5月病の時期にぴったり! なばなの時期が終わったら、旬の青菜で代用しましょう。
- さっぱりしたしょうがの甘酢漬けはやきとりの箸休めにぴったり! 辛味成分のショウガオールは、免疫力向上、血中コレステロール改善、抗菌・抗酸化作用も望めます。血行を良くして体を温める効果もあるので、慣れない冷房にまいっている新社会人の方にもおすすめです。
- その他にも、にんじんとごぼうのきんぴらや、ひじきとれんこんの煮物など、さっと詰められる常備菜を加えると、野菜がしっかり採れてさらにバランスがよくなります! 無理のない範囲で、野菜を多めに入れられるよう心がけてみましょう。
日々のごはんは人のからだをつくるもの。疲れたときには食べ慣れたおうちごはんが一番だと思うので、今回のレシピは奇をてらったような食材や調理法は用いず、シンプルかつ普通であることにこだわりました。
また、新しい環境になじむきっかけ、隣の席の上司との会話の種になるように、鶏むね肉はあえてやきとりに。弟から「箸で食べられなくて手が汚れる。しかも串がごみになるからやめて」と言われるのが目に見えていますが......(笑)。お弁当を開けたときのサプライズも、楽しいランチタイムの構成要素です。一言二言、まわりと言葉を交わすだけでも、仕事モードから離れられ、脳が休まりますよ。
5月病対策のためにも、健康にお仕事を続けるためにも、心とからだの両方からサポートしていきたい......そんな願いのこもった、姉から弟へ送るお弁当のレシピでした。
菱沼未央さんのインタビューはこちら!
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